パルクール競技化に関する意識調査の結果とスポーツパルクールの大会開催について

2018年3月16日

一般社団法人日本パルクール協会

2020年東京オリンピック種目最終候補、FISEなど競技としての注目が集まるパルクール

ここ最近、パルクールが国際的な大会の種目として候補に選出されたり、CMや企業のプロモーション・ビデオなどを通してメディアに取り上げられる数が増えていたりと、かつてない程注目を集めていると感じている方も多いのではないでしょうか。

2020年東京オリンピック競技の最終候補に残った事を皮切りに、今年の4月に開催されるFISE (エクストリーム・スポーツ国際フェスティバル)の種目には、スケートボード、BMXフリースタイル、ボルダリングと並びパルクールが選ばれました。また昨年から、パルクールの動きを活用しながら障害物のあるエリア内を鬼ごっこする競技も流行しており、メディアで取り上げられるなど、大きな動きがいくつも起きています。

こうした盛り上がりは、認知拡大に繋がると前向きな意見がある一方で、パルクールの本来の姿からは掛け離れていってしまうのではないかと慎重な意見も出ています。

そこで、日本パルクール協会ではパルクールのプレイヤー(以下トレーサー)が望む環境とはどの様なものなのかを検討するべく、パルクールの競技化について、日本全国パルクール調査2017の中でトレーサーに意識調査を実施しました。

 

意識調査の結果、競技化賛成派が多く、国内大会があった際には参加意向が高い

競技化に関しては賛成意見が47.8%と反対意見の19.9%と大きく差をつける結果となりました。下記個別で記載頂いた意見をいくつか抜粋しています。

賛成派

  • 競技は本質的なパルクールとは違うかもしれないが、大会などの為に練習した事は実際のパルクールにも活かせると思うし、目標にもしやすくモチベーションが上がりそう。また確実に認知されやすくなり、その結果、人口増加・施設建設などパルクール環境向上にも繋がると思う。実際オリンピックなどで選手が活躍すればその競技は前よりも盛んになっているイメージ。
  • 知名度の低さは深刻な問題だと思う。パルクールの活動を行うにあたって可能な場所および施設の少なさは新規に参入したいと思う人への妨げとなっていることは確かであり、問題は早急に解決しなければならないと考える。
  • 元々競うものでは無いと思っているし、メリットデメリットは出てくるが、競技化することにより、可能性は広がるので有りかなと。専門的知識の無い関係者が関わったって真のパルクールではなくなったとしても、それぞれが自分の中でパルクールに対する美学を持って取り組めばいい。失敗を重ねて歴史を積み重ね、いずれパルクールが正しく普及すれば嬉しい。

 

反対派

  • その人に合った動きが出来るのが魅力的なスポーツだから。競技化された場合、技ばかりに固着して、自由さが無くなりそう。また、いずれ競技化賛成派と対立する可能性もある。まだちゃんとしたルールも無いので、競技化は早い。協会や沢山のトレーサー達の意見を取り入れながら、順を追ってひとつひとつ丁寧に競技化を進めていくのであれば賛成。
  • パルクールは競技化することが難しいにも関わらず、無理に競技化すると現在行われているものから少なからずずれてしまう。そのずれたものがパルクールとして一般に広まってしまうことが心配。
  • あまり規制したり目に見えて数字化してしまうと、個々人の最高のパフォーマンスのための自己鍛錬という本来の目的が薄れてしまうような気がします。

 

わからない・どちらともいえない

  • トレーサー各々の技術面の研鑽・向上をはかる為の目的ならば競技化もありかとは思いますが、自己鍛錬として縛りのない自由さがパルクールのよさでもあると思うので格闘技が実践からスポーツとして、エクササイズとしてなど様々なとらえかたで存在しているように、ルーツや移動に重点を置いているのであれば、競技としてのパルクールは存在してもいいと思う
  • 競技化することによって屋内練習場や指導者が増えたりすればメリットがあると思う。競技化するにあたって、現在いろんな国で行われているような大会であれば良いと思うが、技に難易度や基礎点などが付けられるような競技になるとパルクールの本質とは違ってきてしまうような気がする。
  • 競技化に対して、否定的な考えはありません。競技化されることで、ストリートからパルクールが消えることは無いと思いますし、街中、スポットというもの、またルールや点数に囚われないことがパルクールの根幹にはあると思っているからです。競技化に賛成したい理由は、ローラースポーツのように、ルール化され、大会やイベントが開催されることで、多くの人の目に留まり、パルクールへ興味や理解を持つ人、実際に始めてみようと思う人が増えることは勿論、練習会や教室の開催が容易になると思うのが一つです。また、将来的にプロのトレーサーとなる人たちを見てみたいという、個人的な理由もあります。その反面で、競技化のためには、ルールや管理団体の整備、大会の運営などと言ったことを誰が行うのかと言う問題が付きまとうと思います。そういった意味で、以前話題になっていたように、他の競技の中にパルクールが取り込まれてしまうことだけは望みません。その為、賛成とは言い切れないので、どちらともいえないという回答をさせていただきます。

いずれの意見でも、パルクールが社会的に認められ、練習できる環境が整えられる事に対してはポジティブに考えている人が多い事一方で、反対派からは、競技化することにより、自分を高めることを目的とするパルクールの本質からずれてしまうことや、パルクールの良さである自由がルールに縛られることでなくなってしまうのではないかと懸念する意見がありました。

 

Q. あなたは、パルクールの競技化に賛成ですか、反対ですか。(n=272)

 

また、「あなたは、もしパルクールの関連競技の大会が日本で開催された場合、参加したいと思いますか?」という質問項目では、参加したいという意見が半数以上あり、ポジティブに捉えている人が多い事が分かりました。

 

Q. あなたは、もしパルクールの関連競技の大会が日本で開催された場合、参加したいと思いますか?(n=272)
【スピードラン形式】

【フリースタイル形式】

スポーツパルクールとは?本質と楽しみ方の拡大

パルクールでは本質的に、他者と競う概念はありません。しかし、パルクールの人口増加とともに、パルクールの一部を切り取る形で、特定のルールの中で勝敗を決める新競技が考えられるようになりました。このようにパルクールから派生した新競技では、その新競技がパルクールの本質の理解を妨げ、また変えてしまうことを危惧する考えから、パルクールとは一部、または全てが異なる名称を競技名称にすべきであるという考えがあり、様々な名称がつけられています。

「スポーツパルクール」とは、そのような背景のもと、パルクールの裾野を拡大していくために、パルクールの本来の性質を守りつつ、パルクールとは異なる視点で、パルクールを楽しめるように設計された新競技です。現在スポーツパルクールには、主に以下の3種目があり、欧米諸国を中心に大会、選手権などが開催されています。

  • スピードラン(スタート地点からゴール地点までに設置された障害物を最速で超え、タイムを競う競技)
  • フリースタイル(会場に設置された障害物を利用して自由演技を行い、その得点を競う競技)
  • スキル(パルクールにおける1つ1つの基本動作の飛距離、速さ、高さなどを競う競技)

なお、スポーツパルクールの目的はあくまで特定のルールの中でパルクールを楽しむこと、パルクールの裾野を拡大することであり、他者との競争を目的とせず自己の限界の克服を目指すというパルクールの本質的精神は変わっておりません。

 

今後の大会開催について

日本パルクール協会では、今回の意識調査の結果および各国におけるパルクールの派生競技の現状を踏まえ、パルクールの本質的精神の普及と理解促進を目的に、 「スポーツパルクール」の大会および体験イベントを2018年より日本各地で開催することを決定いたしました。

初年度となる2018年の大会スケジュールは、5月4日(金)、5日(土)に石川県金沢市で開催される忍者パルクール全国大会、およびに2018年夏および秋に予定している全日本スポーツパルクール選手権大会(仮称)の計3回となっております。

また、今後もこの様な全国大会を各地で開催することで、トレーサーの大会出場機会の創出と、パルクール未体験者への認知拡大、理解促進に繋げていきたいと考えております。

 

ぜひ多くの方のご参加をお待ちしております。

 

■参考

日本全国パルクール調査2017

忍者パルクール全国大会開催のお知らせ